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アブソーブ・シュヴァイツ

あら?貴方はどこから来たの?
うふふ、丁度良いと言ったら申し訳ないけど、もし暇ならこのおばあさんの話を聞いてくれないかしら?


……優しいのね。ありがとう。

まずは昔話から話さないと駄目ね……昔、一人の女性がいて、ある国の王子様に一目ぼれしたの……
その王子様はね、とても優しくて笑顔が素敵で誰にでも変わらない接し方をしてて、でも正義感も人一倍強くて
悪い人を捕まえたりしてとても勇敢な人だったの。
その女性はね、強力な魔法が使えてちょっと名のある名家だったから、家柄を利用して王子様に近づいたわ。
うふふ……今思えばすごい無茶をしてたんだと思うわ。
思いが通じたのか、王子様は女性を気に入り結婚を前提にお付き合いをしだしたの……でも順調というわけじゃなくて
反対され引き離されたりもしたけど、惹かれあってる男女を離すのはとても大変で、周りの人も反対するのやめちゃったのよ…
それで晴れて二十代の時に結婚したの。

でもね、子宝には恵まれなかった……女性……アブソーブって言うんだけれど、アブソーブは苦しんだわ
代々国王を務めてきた王子の子孫を絶やすわけにはいかないという重圧や、好きな御方の子供を産むことが出来ない精神的な苦痛で
何日も寝込むこともあった。だけど王子はね、そんなアブソーブの事を責めたりはしなかったのよ
寧ろアブソーブは王子の優しく清らかな愛に包まれていたわ

やがて王子が次期国王に決まったある日、子を宿していることに気付いたの
そこからがもう大変だったのよ……ふふふ……
その時アブソーブは四十五歳、高齢出産だったから、国王はが心配するのも当然よね
でもアブソーブは言ったの

「貴方の子を産めるなら産めるなら この身が滅んでも構わないわ」

愛ってすごいわよね……アブソーブも不安でいっぱいだったはずなのに言い切れちゃうんだもの。
アブソーブの想いに国王も押し負け、翌年のアブソーブが四十六歳の時に腹部を切開し、子供が誕生したわ
とても可愛らしい女の子でね……幸い、母子ともに健康で、その時は国中が祝福したわ。

でも、二人の娘はものすごく親に反発したの
父親は国政で忙しく、母は小さい時こそ、傍に居て一緒に過ごしたが
八歳くらいになると国王の手伝いで、母親らしいことが一切出来なかった
その時は、気にはしていたものの、そんな深刻に捉えていなかった

そのまま十年の月日が流れ、娘が十八歳になったある日、小さな紙切れと共にアブソーブの宝石や服が無くなっていたの

その紙にはね、出ていきます と一言だけ書かれていたの。

アブソーブはその時、初めて自分のこれまでの行いを後悔したわ
だって、娘の行きそうなところなんて見当もつかないし、好きな事も、好きな遊びも全然わからないんだもの
相当落ち込んだでしょうね、それは国王も同じだった……だけど国王だから国を投げ出して娘を探すわけにはいかなかったのよ
結局、側近に娘探しを頼んで、国に仕え続けたわ。

え……?アブソーブは娘を愛してるのかって……?
そうね、難しい質問ね……愛していたわ、少なくとも国を出るまではね……。

娘も結局見つからず、国王は国政に励んだ。
国王は、国民の話を聞き、それを取り入れたり、雨が長期間降らない時は国王の魔法で広範囲に雨を降らせたり国の発展に努めたの
そのおかげか、国の野菜は高値で売れるようになり、牧場も盛んになり、他の国から移り住んでくる人も増えたわ

でも人が増えると、犯罪も増えてしまう……悲しいけど仕方ないことなのよね……
国王は犯罪を犯した人を更生させる施設を作ったわ……

無事更生できたら元の生活に戻れるんだけれど、その施設で何が行われているかはごく一部の人しか知らないの。
ふふ……でもね、私は知ってるのよ?すごいでしょう?
その施設では、アブソーブが自分の魔法を犯罪者に使っていたのよ。もちろんそれだけではないけれど。

アブソーブはね気を吸い取ったり、吐き出したり、それを吸収したりする魔法が得意なの……
犯罪者の強気を吸い取って、弱気な人間にしたり、狂気を吸い取って真人間にしたりね……すごい魔法よね……
アブソーブの家では代々受け継がれてる魔法らしいわよ?……彼女はあんまり使いたくなかったみたいだけどねぇ……
そうして大抵の人間は更生するのだれど、中には手の付けられない犯罪者もいてね、そういう相手に対してアブソーブは……

 


……生気を吸い取るのよ。
生気を吸われた人間は廃人になり、廃人になった人間は更生施設から出されるのよ。
やがてその廃人を見た国民は施設がどんな場所かを面白おかしく広めたの……元々犯罪件数は少なかったけれどそのおかげでぐっと減ったわ。

アブソーブは施設では一件酷いことをしているけれど、表では国王と同じく国民に健気に接したわ。
治る見込みのない病気を吸い取ったり、自分の全てで国民を愛した。

寧ろ……愛した国王が愛する国民だからかしらね?……うふふ……微笑ましいわ……

 


そうして月日は流れ、国王、アブソーブ、共に八十八歳の時よ……
なんと、娘が戻ってきたのよ……これにはアブソーブは心臓が止まるほどびっくりみたいよ?
でも二十四年たって姿なのに母だからかしらね……娘だと分かったみたいでね。何も言わず迎え入れたわ。

娘に子供がいて一緒に連れてきたことに対しては受け入れるのに時間がかかったみたいだけど……
どうやら、子供を授かって何年かして夫とは死別したそうよ……

ここまで、アブソーブはすごい人生を歩んでいると思わない?あら?貴方少し眠たそうね……?
もう少しで終わるからそれまで聞いてくれるとおばあさん嬉しいわ……

 


娘が戻ってきて、しばらくの間は平穏だった……
国政も順調で、失われた家族の時間を取り戻そうと…国王、アブソーブ、娘、孫は出来るだけ一緒に過ごしたわ。
でもね……そんなある日……、ある日の……こと……なんだけれど……、悲しいことが起きるの……

 

 

  

 

 

    ――国王が……殺されたの。

 


いつも行っている農場の視察の時に、隣国から来た人に命を奪われてしまったのよ
その犯人は、その場で国王の守り役や国民に無残に殺されてしまった……
どうして殺したのか……その理由も聞けないままだったわ。
ただ国民を愛した国王の事を国民も愛していたのね……犯人を殺してしまった国民は更生施設に入れられたけれど
御咎めなしで返されたと聞いたわ。

 

アブソーブは、国王の亡骸の傍で失意の底にいた
アブソーブは老いながらも、国王への愛は変わらず、寧ろ前よりもその愛は深かった
国王亡き今、自分が女王になって国を守らないといけない……そうわかっているのに……体が動かない
食事も喉を通らず水も飲まない……老体にはきついはずなのに、国王の傍から離れなかった

見かねた娘がアブソーブに言ったのよ
死んでしまったんだからしょうがない、しっかりしてよ……と。
アブソーブは何かに憑りつかれたように娘の肩を掴んだ

「お前は……お前は……っ、私達から逃げたくせに……なんだい!その態度は……娘のくせに……涙一つ流さないとは!!悪魔の子か!!!」

アブソーブは我を忘れ、娘に対して魔法を使ってしまったの。
娘の、生気を吸ってそれを取り込んだ


    お・・・・・・かあ……さん、ご…め・・・・・・んな……さ…


アブソーブはその消えゆく声に、自分を取り戻したが時はすでに遅く、一気に生気を吸われたアブソーブの娘は髪が白くなり肌も皺くちゃになり
手足も細く、白目をむいてそこに横たわっていた・・・・・・無残な姿だったわ
一方、アブソーブは娘の生気を吸収したせいで、二十歳ほど若返っていた。

娘の亡骸を見下ろしていると、アブソーブは視線に気づいたの。
孫よ、孫の十八歳の男の子。
その子はね、近づいて、自分の母親の亡骸に近づき、見下ろしてこういったそうよ

あんま良い母親じゃなかったけど、大事な人だった……と。
そういうと、孫は魔法を使いスッとその場から消えてしまった。

それからというもの、起きてしまったことを悔やんでも仕方ないし時間もないと国王の代わりに女王となり国政に励む。
孫は、家には帰ってくるものの、人の物を盗んだり悪いことばかりしていたの。
けれど、アブソーブは彼を更生できなかった
大事な母親をあんな目に合わせてしまった負い目なのかそれとも違う何か……。
そしてアブソーブは彼を立派に育てようと決意したの

それは何故かしら、母親を殺めてしまったから?……それとも一族の血を絶やさないため?
きっと両方ね……。そこに愛情はないと思うわ……悲しいけれど……
そんな時よ、大魔導決戦が開催されると聞いたのは。

アブソーブは絶好の機会だと思ったわ。
自分が大魔導師になって、孫を議長に指名する
孫はまだ人間として未熟だけど若いしこれからなんとでもなる……
私が大魔導師、そして孫が議長になれば一族も安泰……そして亡き国王、ジルバートも喜んでくれる。

 


絶対に愛したあの人のためにこの国を大国にし、一族を絶やさないわ・・・・・・
そう誓ったアブソーブの瞳はキラキラ輝いていました……おしまい。

何を隠そう、このアブソーブは……私の事だよ……おやおや寝てしまったのかい?
仕方ないね……この話は退屈だったかもしれないね……私は絶対大魔導師になるよ…・・・
話を聞いてくれてありがとう……おやすみ、どこから来た分からない猫さん。

 

 

 

 

 


名前 アブソーブ・シュヴァイツ
年齢 68歳くらい(実年齢88歳)
身長 約154㎝
体重 42kg

88歳だが、娘の生気を吸収したため、身体能力、見た目は68歳である

 

■使用魔法

1、気を吸う
   生気を吸えば体も衰え吸い尽くせば相手は死ぬ
   士気を吸えば相手はやる気をなくす
   殺気を吸えば戦えなくなる

 その他にも吸うことは出来るが自然に関するものや吸えない気もある(空気、臭気、など)

2、気を吐き出す
   吸った気を相手に吐き出すことで相手に与えることができる。
   いくつか体内に蓄えており現在は狂気と不治の病気と生気がアブソーブの体 内にある
   ずっと蓄えれるわけじゃなく新しく吸うと古い気から消えていく。

3、気を吸収する
   吸った気を蓄積するのではなく、自分が吸収する。


※娘から吸った生気は30年分で、20年分吸収し10年分は蓄積してある
※相手の体のどこかに触れないと使えない
※詠唱などなく、相手の体に触れ息を大きく吸ったり吐いたるすることで発動する

【 所属国家設定 】:
国名:ラスカ
人口:6400万人ほどの中規模国家

前国王:ジルバート・シュヴァイツ
現女王:アブソーブ・シュヴァイツ

地形:東に行けば山地が広がり、有名な山、そして地形を利用した牧場が数多くある、西に行けば豊かな台地が広がり、畑などが多く農業が盛んである

特産品:国内で作られた野菜は高品質で近隣諸国の野菜より高いがラスカ産の野菜は美味しいと評判で好んで買う人も多い。またその野菜を食べて育った馬肉やウールなども高値で取引されている

魔法:ラスカと魔法は密接な関係をもち、魔法は絶対信頼できると国民は信じ、牧場や畑も多くの魔法が使われ生活の一部となっている国民は大抵の人間が使えるが使えない国民もいる。魔法を勉強する施設があり使えない者はそこに通う住民票にはどんな魔法を使うか書く項目がある

国民性:豊かな台地に温暖な気候、そして国王の人柄に似たのが国民の大半が温和。
国王には絶対的な信頼を置き、統率がとれている。犯罪件数は少なめで犯罪を犯した者は捕らえられ更生施設と送られ、更生出来たときは再び国で生活できる。施設で何が行われているのかは国王、女王、一部の大臣しか知らない。

国王は国民に愛されており、国王が亡くなった際には誰もが涙を流した
そして、その妻でアブソーブが女王になることを国民全員が受け入れた

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